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はじめて味噌を仕込んだ日、容器に詰めた味噌が真っ白だったことに驚いた。

味噌は、あの茶色だと思っていたからだ。

私は日本で育って、今はアメリカで暮らしている。だから味噌は、自分で仕込む。

この小さな冊子では、味噌の色と時間をたどる。色のこと。裏の表示のこと。一年、二年、三年で変わる味のこと。そして、瓶の中で今も続いていること。

何かを覚えるためではなく、次に味噌を手に取ったとき、いつもの茶色が少し違って見えるように。
 

色は、あとから生まれる
 

仕込んだばかりの味噌は、驚くほど白い。

大豆と糀と塩を混ぜて、容器に詰めたところ。
売り場で見慣れた「味噌の色」からは、ずいぶん遠く見える。

はじめて仕込んだ年、私はこれを見て少し不安になった。
本当に、あの色になるのだろうか。

大豆の明るい色がまだ残っていて、糀の粒もはっきり見える。
味も香りも若い。味噌汁にすると、汁の色は淡く、味わいもやわらかい。

けれど、ここから時間が動きはじめる。

糀がつくった酵素が、米のでんぷんを糖に、大豆のたんぱく質をアミノ酸へと、少しずつほどいていく。
そして、その糖とアミノ酸が関わる反応が重なって、白かった味噌はだんだん色づいていく。

肉の焼き色や、飴色になるまで炒めた玉ねぎと、同じ種類の変化だ。

つまり、私たちが知っている味噌の色は、最初から材料の中にあった色ではない。

時間の中で、あとから生まれた色なのだ。

そう思って見ると、味噌の色は「そういうもの」ではなく、「何かが起きた結果」に見えてくる。

この章で覚えておきたいのは、それだけでいい。

色は、生まれてくるもの。

次の章で、その色が思ったより当てにならないという話をする。
 

色は、時間そのものではない
 

味噌の色は、時間の中で生まれる。前の章で、そう書いた。

だから私も、長いあいだこう思っていた。色が濃い味噌は、長く熟成した味噌なのだと。
 

けれど、それは違った。
 

味噌の色を進めるのは、時間だけではない。温度でも進む。

ある研究に、こんな比較がある。同じくらいの明るさになるまで熟成させたとき、二十度なら百二十日かかった。三十五度なら、二十日だった。

六倍の差だ。

温度が高いほど、色は速く進む。特に三十度を超えたあたりから、進み方が大きくなる。
反対に二十度を下回ると、色の変化はとても小さくなる。味噌を冷蔵庫に入れると色が止まったように見えるのは、そのためだ。

 

つまり、色を早く進めることはできる。
 

だから、売り場で濃い色の味噌を見ても、それが何年ものかは分からない。

色は追いつく。けれど、追いつかないものがある。
 

もうひとつ、同じ研究に書かれていたことがある。

熟成の温度が高いと、香りや味が育つより先に、色のほうが速く進んでしまう。だから香味の調和に欠けたものになりやすい、と。
 

これを読んだとき、私は少し驚いた。

色が濃いのに、味が浅い。そういうことが起こりうる、ということだから。

さらに、明るさが同じでも、熟成の温度が違えば色調そのものが違ってくることも報告されている。
同じ「濃い茶色」に見えても、赤みの出方が違う。

 

だから、こう言える。

同じ濃さに見えても、同じ時間を歩んだとは限らない。

味噌が熟成する間に変わっているのは、色だけではない。
たんぱく質がほどかれ、酸が生まれ、香りが立ちのぼる。色が追いついたからといって、その全部が同じところにいるとは限らない。


色は、味噌が歩んできた時間の手がかり。

でも、時間そのものではない。
 

私はそのころから、味噌を買わなくなった。

自分で仕込むようになったからだ。

 

それでも、味噌売り場には今も立ち寄る。買うためではなく、見るために。
裏返して、原材料の表示を読む。どんなふうに作られた味噌が、いま棚に並んでいるのか。

その話をする前に、なぜ味噌がそういうふうに作られるようになったのか、少しだけ考えてみたい。
 

なぜ、そうなっているのか
 

はじめて味噌の裏を返して読んだとき、私ははっきりと思った。

これは、自分が食べたいものではない。

迷いはなかった。だから私は、自分で作ることにした。

けれど、それで終わりにはしたくなかった。なぜこうなっているのかを知らないまま「違う」と言うのは、何も知らないのと同じだと思ったからだ。
 

だから、調べた。
 

ガスが出る、という問題

味噌は、生きている。

袋に詰めたあとも発酵は続く。酵母が働き、炭酸ガスが出る。放っておくと、容器はふくらむ。破裂することもある。

これを、遠くまで運ぶ。何ヶ月も棚に置く。北海道でも沖縄でも同じ味で並べる。
手の届く値段にする。

そのためには、この「ふくらむ」をどうにかしなければならない。

答えは、二つある。

ひとつは、発酵を止めること。加熱する。あるいは酒精を加える。動きが止まれば、ガスは出ない。棚の上で味も変わらない。

もうひとつは、ガスを逃がすこと。容器に、小さな弁をつける。ガスは外へ出し、外の空気は入れない。中の味噌は、発酵を続けたまま運ばれていく。
 

同じ問題に、正反対の答えだ。
 

買わなくても、分かること
 

これは、私にとって大きな発見だった。

味噌のフタや袋に、小さな丸いものがついていることがある。あるいは、小さな穴。注意書きが添えられていることも多い。

あれは、ガス抜きの弁だ。

つまり、それがついている味噌は、まだ発酵している味噌だということになる。動いているから、逃がす必要がある。

裏の表示を読まなくても、遠目に分かる。

弁はコストがかかるので、穴だけのものもある。ついていない味噌が良くないという意味でもない。
ただ、ついているものは、確実に動いている。

 

私が売り場でまず目をやるようになったのは、この部分だ。

弁があっても、なくても、次に見るのは表示だ。何から作られているのか。どれくらいの時間を過ごしたのか。何が足されているのか。

次の章で、その読み方の話をする。
 

裏の表示を、読む
 

味噌の裏には、たくさんの言葉が並んでいる。

はじめは、どこを見ればいいのか分からなかった。
全部が同じ大きさで書いてあって、どれが大事なのか見当がつかない。

けれど、一箇所だけ覚えておけばいい場所がある。
 

スラッシュを、探す
 

原材料名のところに、小さな「/」が入っていることがある。

大豆、米、食塩 / 酒精、カラメル色素

この斜めの線には、意味がある。

線の前が、原材料。線の後ろが、添加物。

これを知ってから、私は表示が読めるようになった。全部を理解しなくていい。まず線を探して、後ろに何が並んでいるかを見る
。それだけで、その味噌がどういうものかの輪郭が見える。

線そのものが無い味噌もある。大豆、米、食塩。それだけ。

それが基準になる。何もないところから、何が足されているのかを見る。
 

次に探すのは、熟成期間だ。

ただし、これには表示の義務がない。書いていない商品のほうが多い。

だから、書いてあるということは、書きたいことがあるということでもある。天然醸造という言葉も同じで、書く義務はない。あれば手がかりになる。

無いから悪い、ではない。無いときは「ここには書いていない」と気づく。
それも一つの発見だ。

同じ「濃い」でも、中身が違う

もう一つ、知っておくと見え方が変わることがある。

味噌が茶色くなる現象には、二種類ある。
 

ひとつは、熟成の中で進む着色。糖とアミノ酸が関わる、あの変化だ。これは味噌の色をつくるうえで欠かせない。

もうひとつは、酸素が関わって進む変色。こちらは黒ずみが増え、色調が落ちていく。品質の劣化をともなうため、作り手が極力避けたい褐変とされている。

同じ「濃い茶色」でも、育った色と、傷んだ色がある。
 

家の味噌でも同じだ。空気に触れる面をきちんと押さえておくと、色の濁り方が変わる。

分からないことも、ある

正直に書いておきたいことがある。

表示を読んでも、分からないことはある。

たとえばカラメル色素。これには製法によっていくつかの種類があるが、表示は「着色料(カラメル)」または「カラメル色素」でよいことになっていて、どれが使われているかまでは分からない。
 

熟成の温度も、書かれていない。

つまり、表示は全部を教えてはくれない。

けれど、それでいいと思っている。

分からないことがあると知ったうえで、分かることを読む。

全部を知ってから選ぼうとすると、いつまでも選べない。
読める部分だけ読んで、あとは自分の感覚に預ける。それで十分だと、私は思う。

次の章では、その「感覚」の話をしたい。
一年、二年、三年。時間の違う味噌が、どんなふうに違うのか。


 

一年・二年・三年

ここまでは、表示の話をしてきた。

この章からは、味の話をしたい。

同じ材料から仕込んでも、時間が違えば、まったく別の調味料になる。私はそれを、自分の台所で毎年見ている。

一年味噌は、四季を一巡した味

冬に仕込む。春にゆっくり目を覚まし、夏の暑さの中で発酵が進み、秋に落ち着く。

一年味噌の「一年」は、時計の針が一周したという意味だけではない。

四季を一度、くぐったということだ。

 

白っぽかった味噌が、よく知る味噌の色になる。それでも、仕込みたての明るさがまだ少し残っている。

味は、甘く、丸い。糀の甘みが残っていて、大豆の味と両方を感じられる。味噌汁にすると、汁の色もやわらかく仕上がる。

私は、この味がいちばん好きだ。特に夏は、一年味噌で味噌汁をつくることが多い。

 

二年味噌は、口に残る時間が長くなる
 

二年目になると、色がぐっと深くなる。明るい茶色から、小豆色に近い色へ。

糀の姿も味噌の中になじみ、口当たりがなめらかになる。

味は濃くなる。けれど、一年味噌をただ濃くしたものではない。

強くなるというより、口の中に残る時間が長くなる。

これは私の感覚だけではないらしい。味噌の「コク」は、塩気やうま味が濃いことではなく、味の厚み、広がり、持続性、まろやかさ——そういうものが重なった感覚として捉えられている。

長く熟成した味噌では、熟成の中で生まれるメイラードペプチドという成分が、この厚みや持続性に関わっていると報告されている。熟成十一か月を過ぎたあたりから口に広がる感じと余韻が強まり、二十か月の味噌からは褐色に変化したペプチドが確認されたという。

数字で見ると、不思議な気持ちになる。私が「なんだか長く残るな」と感じていたものに、名前がついていた。
 

三年味噌は、少しで決まる
 

三年目の味噌は、仕込みたての白さからは想像できないほど濃くなる。
糀の粒はほとんど見えなくなり、大豆も糀も、一つの味噌としてなじんでいる。

香りも味も濃厚で、少し加えるだけで料理の輪郭が決まる。

私は冬によく使う。寒い日の味噌汁、根菜の煮物、味噌床、焼きおにぎり。

ただし、料理はだいたい茶色くなる。写真映えより、味映え。それも三年味噌らしさだと思っている。
 

味噌汁の外へ
 

味噌は、味噌汁のためだけのものではない。

私は、いろいろな料理に入れる。ドレッシングに少し。
煮物の隠し味に。ミートソース、カレー、シチュー。
和食でない料理に入れたときのほうが、驚かれることが多い。

 

理由は、たぶんうま味の層が厚いからだ。
 

味噌の中には、大豆のたんぱく質がほどかれてできたアミノ酸や、熟成の中で生まれたペプチドが重なっている。それが、料理全体の味を下から支えてくれる。

作っていて、「何か足りない」と思うときがある。塩を足しても、まとまらない。

そういうとき、小さじ一杯でも味噌を入れると、急に味が引き締まることがよくある。

 

足すのは、塩気ではない。奥行きだ。
 

深い色の味噌ほど、この働きは強い。ただし色も一緒についてくるので、そこは料理と相談する。
軽く仕上げたい料理なら、一年味噌を少し。しっかりまとめたいなら、二年か三年を少し。

「隠し味」という言葉があるけれど、隠すというより、下に敷くという感じに近い。
 

混ぜていい
 

そして、一つに決めなくてもいい。

私は二年味噌をそのまま使うこともあれば、一年味噌と合わせることもある。
混ぜると、甘さや香りや色の間に、どちらにもなかった味が生まれる。

難しい比率はいらない。いつもの味噌汁に、深い色の味噌を少しだけ足す。
味を見て、もう少し欲しければ足す。

レシピ通りではなく、自分の舌で「ここ」を探す。

熟成年数は、優劣ではない。三年味噌がいちばん立派なわけでもない。それぞれの時間に、それぞれの味がある。

今日は、明るい味と深い味の、どちらを食べたいのか。

味噌を選ぶことは、自分の感覚に気づくことでもある。

次の章では、その味をつくっていたものたちの話をする。
私ではない、目に見えない働き手たちのことだ。

 

瓶の中は、動き続けている
 

大豆を煮て、つぶして、糀と塩を混ぜる。

そこまでは、私の仕事だ。

その先で味噌を育てたのは、私ではなかった。

仕事は、受け渡されていく

味噌は、一つの菌でつくられているわけではない。

麹菌、乳酸菌、酵母。この三つが、全員で同時に同じことをしているのでもない。

まず麹菌が、でんぷんやたんぱく質をほどく酵素をたくさんつくる。その酵素が、米のでんぷんを糖に、大豆のたんぱく質をアミノ酸へ変えていく。
そこで生まれた糖を、今度は乳酸菌や酵母が使い、酸味や香りを重ねていく。

仕事を受け渡しながら、味噌が育っていく。
 

面白いのは、その先だ。
 

糀の粒は、時間が経つと見えなくなる。けれど、麹菌がつくった酵素は、道具のように味噌の中に残って、原料をほどき続ける。

姿が見えなくなっても、残した仕事は続いている。

塩は、誰に働いてもらうかを決めている

塩にも、味をつける以外の役割がある。

塩の多い味噌の中では、どんな微生物でも自由に増えられるわけではない。塩が好ましくない菌の増殖を抑え、その環境で働ける乳酸菌や酵母が、味噌を育てていく。
 

つまり塩は、発酵を止めるためだけのものではない。
瓶の中に、誰が働けるかという環境をつくっている。

 

塩が採用担当だとしたら、かなり厳しい。けれど、その選考を通った小さな働き手たちが、味噌に香りと味を重ねていく。

空気は、入れすぎないほうがいい

味噌の色が濃くなることには、二種類あると前の章で書いた。熟成の中で進む着色と、酸素が関わる変色だ。

これは、家の瓶の中でも起きている。

途中で全体を混ぜる「天地返し」をすると、発酵は進みやすくなる。けれど同時に空気も入るので、色調の低下は避けられないとされている。

どちらを取るか、という話だ。

私は、ほとんどしない。

 

瓶を伝う雫は、もう一つの調味料
 

ガラスの瓶で仕込むと、この変化がよく見える。

秋から冬に仕込んだ白っぽい味噌が、次の夏には少しずつ茶色へ変わっていく。

やがて、味噌の間から濃い色の液体がにじみ、瓶の内側をゆっくり伝ってくることがある。

これは「たまり」だ。

水が出て失敗したように見えるけれど、そうではない。
味噌から分かれた、うま味を含む液体だ。

出る量は、その年によって違う。夏には、ぶくぶくと溢れ出てくることもある。
そういうときは、働いてるね、元気だね、と思う。

見た目もいろいろだ。キャラメルのようにとろりと濃いこともあれば、薄口醤油のように澄んでいることもある。
 

そして、控えめに言って絶品だと思う。
 

濃いのに、角がない。うま味の底に甘みがあって、舌の上にゆっくり広がっていく。

何かにかけなくていい。それ単体で味わいたくなる。

一滴も無駄にしたくない。そう思いながら味わう。何度食べても、そのたびに感動する。

瓶を伝う濃い雫は、味噌が外へこぼした、もう一つの調味料なのだ。

昨日と同じように見える味噌も、昨日とまったく同じではない。

静かな瓶の中で、変化は続いている。

そして、この変化を見るために必要なのは、一年ではない。

次の章で、その話をする。
 

一年のうちで、数日
 

ここまで、味噌の時間の話をしてきた。

一年、二年、三年。四季を一巡すること。瓶の中で続いている変化。

長い時間の話ばかりだったから、こう思われたかもしれない。

大変そうだ、と。

手を動かすのは、数日

味噌を仕込むのは、一年に一度だ。

前の晩に大豆を水に浸す。翌日、それを煮て、つぶして、糀と塩を混ぜ、容器に詰める。
前後を入れても、数日。

 

そして、それが済んだら、あとは何もしない。
 

春が来て、夏を越えて、秋になる。その間、味噌は勝手に育っている。

私がしていたのは、選んで、混ぜて、待つことだけだった。
 

そして、年々楽になる
 

はじめての年は、確かに時間がかかった。

けれど、二年目は少し早くなった。三年目はもっと。手が覚えていく。段取りが分かる。どこで力を抜いていいかが見えてくる。

年を重ねるごとに、経験が深くなり、楽になっていく。

暮らしのほうが、軽くなった
 

そして気づいたことがある。

一年を通して、味噌を買いにスーパーへ行かなくなった。

切らすことがない。「そろそろ無くなるな」と思うこともない。

台所には、いつも味噌がある。

 

何かあったときの備えにもなる。長く置けるものだから、心強い。
 

節約にもなった。仕込むときにはまとまった量の材料を買うけれど、一年分と考えれば、買い続けるより安い。
 

そして何より、何からできているのかを、私は全部知っている。
 

どこで育った大豆か。どんな米からの糀か。どこの海の塩か。それを選んだのは自分だ。

家族の手が触れ、季節を一緒に過ごした味噌が、台所にある。

手間が増えたはずなのに、暮らしは前より楽になった。

不思議だけれど、そうなのだ。
 

今日、どの時間を食べよう
 

味噌を選ぶとき、私が見ているのは値段でも色でもない。

今日の自分が、明るい味を食べたいのか、深い味を食べたいのか。

それを、自分に聞いている。

最初から完璧な材料を揃えなくてもいい。誰かの正解を、そのまま自分の正解にしなくてもいい。

まず、見てみる。味わってみる。できそうなら、仕込んでみる。

一杯の味噌汁の中には、大豆と糀と塩だけではなく、その味噌が過ごしてきた時間が入っている。

今日、どの時間を食べよう。

 

味噌を見る、7つの視点
 

  • 色色は熟成の中で生まれるもの。最初から材料にあった色ではないと知る。

  • 温度色は時間だけでなく温度でも進む。濃さは、熟成年数の証明にはならない。

  • つくり方発酵を止めるか、ガスを逃がすか。届けるための答えは一つではないと知る。

  • 表示スラッシュの前と後ろを見る。書いていないことに気づくのも、一つの発見。

  • 時間一年、二年、三年。優劣ではなく、今日どの味を使いたいかで選ぶ。

  • 微生物仕事は受け渡されていく。塩は、誰に働いてもらうかを決めている。

  • 頻度手を動かすのは一年のうちで数日。あとは、待つ。
     

味噌の時間 ── 0年から3年まで
 

色は、味噌が歩んできた時間の手がかり。でも、時間そのものではありません。

  • 仕込みたて白っぽい / 大豆の味が強く、若い

  • 一年明るい茶 / 甘く、丸い。糀の甘み / 淡い味噌汁、和え物、夏

  • 二年小豆色 / 口に残る時間が長い / 味噌汁、炒め物、合わせ

  • 三年濃い茶 / 濃厚。少しで決まる / 煮込み、味噌床、根菜、冬


裏の表示を読む ── 5つのところ
 

  • ① スラッシュを探す大豆、米、食塩 / 酒精、カラメル色素 ── 線の前が原材料、後ろが添加物。

  • ② 線の後ろに、何があるか何もないものもある。それが基準になる。

  • ③ 熟成期間の記載書く義務はない。あれば手がかり。

  • ④ 天然醸造の記載同じく、あれば手がかり。

  • ⑤ フタや袋の、ガス抜きの弁裏を見なくても分かる。ついていれば、まだ発酵している。

  • ── 表示では分からないこと ──カラメル色素の種類 / 熟成の温度


     

この号の出どころ

本藤 智「味噌の着色と色調 ──「さえ」と「くすみ」について──」

日本醸造協会誌 第88巻 第1号 41-49(1993)信州味噌研究所

村田 容常「メイラード反応により形成される多様な色素」

日本醸造協会誌 第117巻 第2号 66-75(2022)東京農業大学

ほか、味噌のコクとメイラードペプチドに関する報告、

カラメル色素の表示に関する公的資料

確かめられていないことは、確かめられていないと書きました。

この冊子について

ここに書いたのは、二〇二六年の私が知っていることです。

来年、違うことを書いているかもしれません。

実際、これまでにも何度か変わってきました。以前とは違うものを選ぶようになったことも、よくあります。大豆を変えた年、糀を変えた年、塩を変えた年。そのたびに、見えるものが少しずつ変わっていきました。

それでいいと思っています。

仕込むたびに、分かることが増える。読むたびに、知らなかったことが出てくる。そうやって変わっていける方が、健やかだと感じます。

だから、これを正解として受け取らないでください。

あなたが選ぶものは、あなたの台所と、あなたの体と、あなたの季節から決まります。私の選ぶものと違っていて、まったく構いません。

まず、見てみる。味わってみる。

そこから先は、あなたのほうが詳しくなります。

 

先人たちが紡いできた知恵を受け取り

あなたの暮らしの中で育て

また誰かへ手渡していく








 

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