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OUR STANCE

TANEの見方

受け継がれてきた知恵と、科学のあいだで

まだ説明できないことと、存在しないことは、同じではありません。

同時に、説明できないからといって、それをすぐに神秘的な力の証拠にしてよいわけでもありません。

TANEが大切にしたいのは、その両者の側面を見て、その間に立ちながら最終的には自分で考え決めることです。

私たちの「説明」は変わる。
自然は、ずっと続いている。

太陽が昇り、沈むこと。
月が満ち、欠けること。
季節が巡ること。
種が芽吹き、育ち、実り、枯れ、また次の命につながること。
目には見えない無数の微生物が、土にも、食べものにも、私たちの身体にも存在していること。
人が食べ、眠り、育て、つくり、誰かと暮らし、次の世代へ何かを手渡していくこと。

私たちの「説明」は、時代とともに変わります。
けれど、私たちが向き合ってきた自然そのものは、科学という言葉が生まれるはるか以前から、そこにありました。

人は、名前を知らなくても、その働きを見ていた。

菌という存在を知らなくても、発酵する食べものをつくっていた。
現代の気象学を知らなくても、雲や風、植物や動物の変化を読み取っていた。
精密な時計がなくても、太陽の高さや影、星、月の満ち欠けから時を知っていた。
植物の成分を化学式で知らなくても、長い経験の中から、それぞれの植物を食べ、使い、身体のために用いてきた。

農耕の始まりは、一万年以上前にさかのぼります。1約九千年前の中国の遺跡の土器からは、米とはちみつと果実を発酵させた飲みものの痕跡が見つかっています。2それが生きた微生物の働きだと示されたのは、19世紀の半ばのことでした。3

日本の縄文時代にも、口のまわりに小さな穴が並んだ土器があります。
酒をつくる器だったという説があり、同じ形に作って試すと、実際に酒ができました。穴は、発酵で出る気体を逃がすためだったのではと考察されています。4

もしそうなら、菌も、発酵という言葉も知らないまま、人は観察から、それが必要だと知っていたことになります。
(太鼓だったという説もあります)

その力を感じさせるものは、世界の各地に残されています。

約1万1500年前の、トルコのギョベクリ・テペ。
作物や家畜をまだ持たなかった人々が、巨大な石柱を切り出し、運び、彫刻を施して、大きな建造物をつくっていました。5

約2100年前のギリシャでは、青銅の歯車を組み合わせ、太陽や月の動き、暦の周期を表す「アンティキティラ島の機械」がつくられていました。
見つかった歯車は30枚。残っているのは、全体の3分の1ほどです。6

そこには、成功だけでなく、失敗や危険、やり直しも含まれていたはずです。
その経験が次の世代へ渡され、土地や時代に合わせて変わりながら、残ってきました。

伝統とは、昔の形をそのまま保存してきたものではありません。
人と自然との長い関係の中で、選ばれ、変わり、受け継がれてきたものでもあります。

科学は、確かめ続ける。

実験して確かめ、結果を公開し、互いに検証する。
その場が形になったのは、17世紀ごろのことです。7

科学の大切なところは、確かめ続けることにあります。

新しい観察や技術によって、それまで正しいと考えられてきた説明が修正され、覆ることも少なくありません。
「大陸は動いている」という考えは、1912年に出されたときには受け入れられませんでした。海の底の調査が進んだ1960年代になって、定説になりました。8
しかし、その定説も数年後にはまた覆るかもしれません。

昨日の「正しい」が、今日も同じとは限らない。
それは科学の弱さではなく、問い直しながら理解を更新し続ける、科学そのものの大切な性質なのだと思います。

そして科学は、いまも自然のすべてを説明し終えたわけではありません。
星や私たちの体をつくるふつうの物質は、宇宙全体の5%ほど。残りの大部分は、正体がまだ分かっていません。9

TANEでは
何千年、何万年と、人が見て、触れて、食べて、育てて、失敗して、また試してきた時間に、深い信頼を置いています。

いまの科学は、ずっと前からそこにあった自然の営みに、あとから一つずつ名前をつけている途中なのだと、私は感じることが多くあります。

科学によって、新たに救われたものもあります。けれど、失ったものもあります。

どこからが、人の解釈か。

日本にも、考えさせられる場所があります。

岐阜県下呂市の金山巨石群(県の史跡・岩屋岩蔭遺跡)では、夏至や冬至のころ、岩のすき間に光が差しこみます。
これは、いまも毎年、その場で確かめられることです。10

縄文の人々が、太陽の動きを読むためにそうしたのかどうか。
考古学は、まだそうだと確かめてはいません。

けれど私は、毎年同じころ、同じ場所に光が入るのを、偶然とは思えません。

確かめられていることと、私がそう感じていること。
その両方を、分けて書きます。

TANEは、こう書き分けます。

科学には、科学の確かめ方があります。
歴史には、歴史の読み方があります。
伝承には、その土地と時代、人々の経験があります。
象徴には、人が自然をどう見つめ、そこにどんな意味を見いだしてきたのかという物語があります。

それらを一つに混ぜてしまうのではなく、ひとつひとつを、その背景とともに見ていきます。

何が分かっているのか。
何がまだ分からないのか。
何が記録として残っているのか。
何が経験として受け継がれてきたのか。
そして、人はそこに何を見てきたのか。

先人が残した知恵のすべてが正しかった、とは考えません。長く続いたからという理由だけで、科学的に正しいとも言えません。

科学的な証明の有無だけで、文化の価値を決めることもしません。
伝統として語られてきたことを、そのまま科学的事実や健康効果の証明へ置き換えることもしません。
そこから、自分で考えます。自分はどう思うのか、どう感じるのか。

同じ太陽の下で。

人は、同じ太陽を見てきました。
同じ月を見上げ、同じ土に触れ、同じ季節の巡りの中で、食べ、眠り、育て、生きてきました。

人は、同じ自然をどう見て、何を感じ、何を大切にして生きてきたのか。

その長い時間の中から受け取ったものを、いまを生きる私たちはどう選び、どう暮らしに取り入れていくのか。

TANEは、古いから信じるのでもなく、新しいから正しいと決めるのでもなく、

確かめられることは、確かめる。
まだ分からないことは、分からないまま大切に置いておく。
受け継がれてきた知恵には耳を澄ましながら、それが生まれた背景を知る。
そして最後は、自分で考え、自分の暮らしに必要なものを選ぶ。

人と自然とのつながりを、もう一度見つめ直す場所。

TANEは、そんな場所でありたいと考えています。

TANE JOURNEY

出どころ
  1. National Geographic Education「The Development of Agriculture」 https://education.nationalgeographic.org/resource/development-agriculture/
  2. McGovern, P.E. ほか(2004)「Fermented beverages of pre- and proto-historic China」PNAS 101(51) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC539767/
  3. Science History Institute「Louis Pasteur」 https://www.sciencehistory.org/education/scientific-biographies/louis-pasteur/
  4. 松本市立考古博物館「縄文時代の土器2」(有孔鍔付土器) https://matsu-haku.com/kouko/archives/1053
  5. UNESCO World Heritage「Göbekli Tepe」 https://whc.unesco.org/en/list/1572/
  6. Freeth, T. ほか(2021)Scientific Reports 11:5821 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7955085/
  7. University of St Andrews, MacTutor「The Royal Society」 https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Societies/RS/
  8. U.S. Geological Survey「This Dynamic Earth: Historical perspective」 https://pubs.usgs.gov/gip/dynamic/historical.html
  9. NASA Science「Building Blocks」 https://science.nasa.gov/universe/overview/building-blocks/
  10. 下呂市「金山巨石群」 https://www.city.gero.lg.jp/site/kanko/31441.html / 観光庁 多言語解説文データベース https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R5-00602.html

確かめた日:2026-10-02