TANE JOURNEY TANE JOURNEY
日本語 EN 한국어

ホーム›暮らし›衣服を知る›洗濯した繊維の行き先

CLOTHING

洗濯した繊維は、どこへ行く?

フリースの毛足の寄り

化学繊維の服を一回洗うと、目に見えない糸くずが何十万本か出る。
その先は、海だけではない。土にも行く。

洗濯機のくず取りネットにたまる、あの糸くず。
あれは目に見える分。網をすり抜ける細い繊維が、排水と一緒に流れていく。
この話は「海のプラスチック」として語られることが多い。でも、たどっていくと半分は土の話だった。

このページは、どれだけ出るのか、どこへ行くのか、綿やウールならどうなのか、家でできることは何か、を数字と出どころで並べたもの。

一回の洗濯で、どれだけ出るか

いつ・どこ何を洗って、何が分かったか
2016年
イギリス
ポリエステル・ポリエステル綿混・アクリルの布を、温度や洗剤を変えて洗った。6kg の洗濯で、アクリルなら約70万本と推定。綿混はいつも、ポリエステルやアクリルより少なかった。繊維は太さ 12〜18 µm、長さ 5〜8 mm※1
2016年
アメリカ
フリースのジャケットとセーター5枚を、家庭用の洗濯機で。1枚から0〜2 g(服の重さの 0.3% を超えることも)。上から入れる縦型は、横から入れるドラム式の約7倍出た。古くなった服ほど多い※2
2019年
イタリア
市販の服を家庭用の洗濯機で。服 1kg あたり 124〜308 mg=64万〜150万本。多くは長さ 0.36〜0.66 mm、太さ 12〜16 µm。この大きさは下水処理場を通り抜けうる。ポリエステルとセルロースの混紡からは、セルロースの繊維も大量に出た※3
2020年
イタリア・イギリス
同じポリエステルでも、織りが詰んでいて・撚りが強く・長い繊維(フィラメント)の服がいちばん出にくい。ゆるい編み・短い繊維・甘い撚りは出やすい。そして着ているだけでも空気へ出る。一年で見ると、洗濯で水へ出る量と同じくらいの桁※4

µm(マイクロメートル)は 1mm の千分の1。髪の毛の太さがおよそ 50〜100 µm なので、その5分の1ほどの細さ。

科学数字は研究ごとの条件つき。「何本」は服・洗濯機・洗い方で何倍も変わる。桁として読む。

どこへ行くか ── 処理場、川、そして土

下水処理場は、よく取り除く。それでも

2016年、スコットランドの処理場(65万人分)で、入ってくる水と出ていく水を調べた。
微細なプラスチックは 98.41% 取り除かれていた。それでも、残りだけで1日に 6,500万個が川へ出る計算だった。※6

そして、取り除いた 98% はどこへ行くか。汚泥(下水の泥)の中へ。

汚泥は、畑へ行くことがある

2019年、チリ。下水の汚泥を肥料として畑にまいてきた31か所の土を調べた。
汚泥 1g に 18〜41個(中央値 34個)の微細なプラスチック。1回まいた畑の土は 1g に 1.1個、5回まいた畑は 3.5個。回を重ねるほど増えていた。
そのうち、汚泥の 90%・土の 97% が「繊維」だった。※7

汚泥がどれだけ土へ行くかは、国でちがう。

国汚泥の行き先
アメリカ
(2024年)
59.5% が土地へ(そのうち 53% が農地)。焼却 14%、埋立 24.5%※8
日本年間およそ 230万t。肥料として使われるのは約15%。国は 2030年までに肥料利用を倍にする目標を立てている※9

洗濯の糸くずは、海の話として語られてきた。
でも処理場で取り除いた分は、泥になって、畑へ行くことがある。

汚泥を肥料にすること自体は、リンや窒素を土に戻す古い知恵の形でもある。悪いのは汚泥ではなく、そこに混ざる繊維。出口で分けるより、入口で減らすほうが、話が早い。

綿やウールなら、出ないのか

出る。むしろ重さでは多いこともある。

2019年・アメリカ

綿・レーヨン・ポリエステルの編み地を、実験室と家庭の洗濯機で洗った。
綿とレーヨンは 布 1g あたり 0.2〜4 mg、ポリエステルは 0.1〜1 mg の繊維が出た。温度が高いほど、洗剤を使うほど増えた。

違いは、そのあと。水の中で、綿とレーヨンの繊維は分解されていくと確かめられた。ポリエステルは長く残る。※5

だから、分かれ目は「出るか出ないか」ではなく、出たあと、土や水の中で、ほどけていくかどうか。
ウールと麻については、同じ形で測った研究をまだ見ていない(下の「まだ」)。

法律と、道具

何どうなっているか
フランスの法律2020年の法律(AGEC法 79条)で、2025年1月1日から新しい洗濯機に、繊維の流出を抑える装置を付けることになった。ただし、それを動かす政令が2026年3月の時点でまだ出ておらず、国会で「いつ出すのか」と質問されている※10
家で使う道具
(2020年・イギリス)
6種類の道具を比べた。排水口に付ける外付けのフィルターがいちばん効いて約78%減。服を入れて洗う袋は約54%減(袋の中で繊維が抜けにくくなる)。いちばん効かなかったものは 21%。著者は「着ている間に出る分は、どの道具でも減らせない」と書いている※11

誰が金を出したか

イギリスの研究はプリマス大学、イタリアはイタリア学術会議の研究所、チリは大学、アメリカの綿の研究は州立大学。
ただし、このページの多くは論文の抄録(要約)から書いていて、資金の出どころまで本文で確かめられていない研究がある。「まだ」に書いた。
アメリカの汚泥の数字は環境保護庁、日本は国土交通省。どちらも国の統計。

TANEの読み

出ない服は、ない。
でも、出る量と、出たあとは、選べる。

どこで何を変えるか
選ぶときいちばんよく洗うもの ── 肌着・ふきん・タオル・寝具 ── は綿・麻・ウールに。化学繊維のフリースを買うなら、目の詰んだもの※4
洗うときまとめて・低い温度で・短く。※5化学繊維は洗濯袋に入れる(約半分に)。※11次に洗濯機を買うなら、ドラム式が少ないという研究がある※2
洗わないときウールのセーターは毎回洗わず、風に通す。洗う回数そのものが減る
着るとき着ていても出る。※4だから根っこは、一枚を長く着ること。買う枚数が減れば、出る量も減る

やってみる

次の洗濯のあと、くず取りネットの中身を手のひらに出して、色を見る。
何色の糸が多いか。それが、いちばんよく繊維を出している服。

その服だけ、次から洗濯袋に入れてみる。一枚からでいい。

海か土か、ではなく。
出口で拾うより、入口で減らす。

次の問い

では、入口で減らすには。服を長く着る洗い方は?
→ 洗濯と、服を長く着ること

→ 衣服を知る(衣の章のはじめへ。素材 → 加工 → 肌 → 水と土 → 選ぶ・洗う)

まだ、確かめられていないこと(6)
  • ウールと麻の繊維が、水や土の中でどう分解されるか。綿とレーヨンの研究(※5)と同じ形のものを見ていない
  • 日本の下水汚泥のうち、焼却される割合。国土交通省の統計の原典で確かめる(肥料利用 約15% までは確認)
  • 日本の家庭に多い縦型の洗濯機での実測。「約7倍」はアメリカの5枚の研究(※2)
  • フランスの政令がその後出たかどうか。2026年3月の国会質問までは「未公布」
  • 各研究の資金の出どころ。抄録しか開けなかったもの(※1〜※7・※11)は本文で確かめる
  • 繊維が人の体に入る話(肺や血液で見つかったという報告)。このページでは水と土に絞った。別に調べる

分かったら、ここに足していく。

出どころ(11)
  1. ※1 Napper IE, Thompson RC「Release of synthetic microplastic plastic fibres from domestic washing machines: Effects of fabric type and washing conditions」Marine Pollution Bulletin 112, 2016(6kg のアクリルで70万本超・綿混は少ない・12〜18 µm・5〜8 mm) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  2. ※2 Hartline NL ほか「Microfiber Masses Recovered from Conventional Machine Washing of New or Aged Garments」Environmental Science & Technology 50(21) 2016(5枚・0〜2 g・縦型は横型の約7倍・古い服ほど多い) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  3. ※3 De Falco F ほか「The contribution of washing processes of synthetic clothes to microplastic pollution」Scientific Reports 9, 2019(124〜308 mg/kg=64万〜150万本・0.36〜0.66 mm・混紡からセルロースの繊維も) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  4. ※4 De Falco F, Cocca M, Avella M, Thompson RC「Microfiber Release to Water, Via Laundering, and to Air, via Everyday Use: A Comparison between Polyester Clothing with Differing Textile Parameters」Environmental Science & Technology 54(6) 2020(着ていても空気へ・年で見ると洗濯と同じ桁・詰んだ織りと強い撚りが最少) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  5. ※5 Zambrano MC ほか「Microfibers generated from the laundering of cotton, rayon and polyester based fabrics and their aquatic biodegradation」Marine Pollution Bulletin 142, 2019(綿・レーヨン 0.2〜4 mg/g・ポリエステル 0.1〜1 mg/g・綿とレーヨンは水中で分解、ポリエステルは残る) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  6. ※6 Murphy F, Ewins C, Carbonnier F, Quinn B「Wastewater Treatment Works (WwTW) as a Source of Microplastics in the Aquatic Environment」Environmental Science & Technology 50(11) 2016(98.41% 除去・それでも1日 6,500万個) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  7. ※7 Corradini F ほか「Evidence of microplastic accumulation in agricultural soils from sewage sludge disposal」Science of the Total Environment 671, 2019(31か所・汚泥 18〜41個/g・土 1.1→3.5個/g・繊維が 90%/97%) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
  8. ※8 米国環境保護庁(EPA)「Basic Information about Sewage Sludge and Biosolids」(2024年:土地へ 59.5%・うち農地 53%・焼却 14%・埋立 24.5%) 見る(2026-10-30 確認)
  9. ※9 国土交通省「下水汚泥資源の肥料利用」(年間約230万t・肥料利用は約15%・2030年までに倍増) 見る(2026-10-30 確認)
  10. ※10 フランス国民議会 書面質問 n° 13878(2026-03-31 官報掲載。AGEC法 79条・2025年1月1日・政令が未公布) 見る(2026-10-30 確認)
  11. ※11 Napper IE, Barrett AC, Thompson RC「The efficiency of devices intended to reduce microfibre release during clothes washing」Science of the Total Environment 738, 2020(6種・外付けフィルター 約78%・洗濯袋 約54%・最低 21%) 見る(2026-10-30 確認・抄録)