CLOTHING
洗濯と、服を長く着ること

洗うほど、服は少しずつ減る。洗剤は、川へ行く。
どちらも、「量」の話。
服を買うときの話は、ここまでのページでしてきた。
でも、服と付き合う時間のほとんどは、買ったあと。着て、洗って、干して、しまう。その繰り返しの中で、服は減り、水は流れる。
このページは、洗剤と柔軟剤の「量」、流れた先の川の決まり、そして長く着ることが何を変えるかを、数字で並べたもの。
柔軟剤 ── 2倍入れると、何が起きるか
2020年・国民生活センター
「柔軟仕上げ剤のにおいがきつくて頭が痛くなる」。こうした相談が、2014年度から 928件。そのうち 594件(64%)は「体に害があった」という申し出だった。2013年に一度 注意を呼びかけたあとも、年に 130〜250件が続いている。※1
センターは市販の柔軟剤で試した。香りの強いタイプを表示の2倍の量で使うと、洗濯物から出る揮発性の化合物(TVOC)が、はっきり増えた。無香性や微香のタイプでは、2倍にしても増えなかった。※1
センターの呼びかけは三つ。自分に心地よいにおいでも、他の人には体調を崩すもとになりうる。香りの強いタイプは使用量の目安を守る。選ぶときはパッケージの「香りの強さの目安」を見る。※1
柔軟剤は、繊維の表面に残すための薬。残すのが目的だから、服にも、空気にも残る。
→ 何が付いているかは 服の加工のこと(売る前にもう柔軟剤が付いている話)
記録相談の件数は、においで困った人が声を上げた数。困っていない人の数は分からない。どちらの数も、そのまま置く。
洗剤は、川でどう見られているか
洗濯や食器洗いの洗剤に多く使われる成分に、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)がある。
この成分は、2013年3月27日に、水の環境基準に加わった。川や湖で、水の生きものを守るための決まり。※2
| どこ | LAS の基準(1Lの水に) |
|---|---|
| 川・湖 | 0.03 mg 以下(イワナやサケマスのすむ水域)。産卵の場所は 0.02 mg 以下 |
| 海 | 0.01 mg 以下。産卵の場所は 0.006 mg 以下 |
なぜ決まりができたか。LAS は「緑藻、珪藻、ミジンコ、メダカ、ニジマス、マダイ等の水生生物に対し毒性を有することが知られている物質」で、「洗濯や食器洗い洗剤として広く家庭においても使用され、その排水の多くは下水道へ流入する」から。※3
下水処理場で、どのくらい取り除かれるか。日本でいちばん多い処理のやり方(活性汚泥法)で調べた研究があり、環境省も2018年に排水の規制を検討している。※3※4取り除く割合の数字は、まだ本文を確かめていない(下の「まだ」)。
ここで言えるのは、一つ。洗剤は、使った分だけ川へ向かう。処理場が取り除くとしても、入口で減らすほうが早い。繊維の話と同じ形。
科学基準の値と毒性は国の資料。「洗剤を使うと川が汚れる」とは書いていない。「基準があり、それだけ見られている」まで。
長く着ると、何が変わるか
2012年・イギリス
資源の団体 WRAP の調べでは、服1枚を3か月長く着る(実際に着る期間を3か月のばす)だけで、CO2・水・ごみの三つの足あとが、それぞれ 5〜10% 減ると見積もられた。
同じ調べで、イギリスの家のたんすの服の約30%は、1年以上着られていなかった。年に 35万トンの服が埋め立てられていた。※5
日本では、1人が1年に一度も着ていない服が 約24枚。1着を作るのに CO2 およそ 25.5kg、水 2,300L。※6
長く着ることは、「作らなくてよかった1枚」を増やすこと。その1枚の分の水と CO2 が、使われずに済む。
3か月長く着るだけで、5〜10%。
服の寿命は、洗い方で決まる部分が大きい。
服の寿命を決めるのは、洗い方
繊維は、洗うたびに少しずつ抜ける。温度が高いほど、洗剤が多いほど、よく抜ける。※7ウールは水と熱と摩擦で縮む。※8つまり、洗う回数と強さが、そのまま服の寿命。
| 何を | どう変えるか |
|---|---|
| 回数 | 一度着ただけのセーターや上着は、洗わずに風に通す。汗をかいた肌着は洗う。分ける |
| 量 | 洗剤も柔軟剤も、箱に書いてある目安の量。多く入れても、落ちる汚れは増えない。残る分と流れる分が増える※1 |
| 温度 | 低い温度で。繊維の抜けが減り※7、ウールの縮みも減る |
| まとめる | 少ない枚数で何度も回さず、まとめて。水も洗剤も1回分で済む |
| 干す | 日に当てすぎない。色があせ、繊維がもろくなる。乾燥機は高い熱で繊維を抜く(くず取りにたまるのがその分) |
| 直す | ほつれた1か所を縫う。ボタンを付け直す。「捨てる理由」の多くは小さい |
どれも、新しく買わなくていい。今日の洗濯から変えられる。
他にもある
洗剤は、一つの種類ではない。石けん(油とアルカリから作る、脂肪酸の塩)も、合成の洗剤も、どちらも「界面活性剤」── 水と油をなじませる働きの仲間。
どちらが正しいか、ここでは言わない。調べきれていない。言えるのは、どちらも「量」で決まるということ。
そして、酸で落ちる汚れ(水あか・石けんかす)と、アルカリで落ちる汚れ(油・皮脂)がある。クエン酸と重曹で済む場面が、思ったより多い。→ TANE リンク集(クエン酸のこと)
TANEの読み
買うときに迷うより、洗い方を変えるほうが、ずっと簡単で、ずっと効く。
箱の目安の量、低い温度、風に通す。それだけで、服は長く持ち、流れる洗剤は減る。
いい服を買うことより、持っている服を長く着ること。それが、この章ぜんぶの着地点。
やってみる
洗剤と柔軟剤の箱を見て、目安の量を一度 計量カップで量る。いつも入れている量と比べる。
今週、一枚だけ「洗わずに風に通す」をやってみる。においが残っていなければ、その服はそれでよかった、ということ。
いちばん効くのは、箱に書いてある量。
いちばん長持ちするのは、洗わない日。
次の問い
では、洗っても落ちない色は、何で付けた?
→ その色は、何で染めた?
→ 衣服を知る(衣の章のはじめへ。素材 → 加工 → 肌 → 水と土 → 選ぶ・洗う)
まだ、確かめられていないこと(6)
- 下水処理場で LAS がどれだけ取り除かれるか(割合)。研究の1枚目までしか開けていない
- 石けんと合成洗剤の、環境と肌での違いを比べた公的な資料。業界団体の資料は見つけたが開けていない
- 洗剤を目安より多く入れると洗浄力は上がらない、という点の実測。箱の表示と経験では知られているが、出どころを置けていない
- 新しい洗濯表示(2016年12月から・41種類)の公的なページ。消費者庁・政府広報とも開けなかった
- 柔軟剤の香料の成分表示。国民生活センターは 0.01% 以上の成分名の表示を業界に求めたが、その後どうなったか
- 乾燥機で繊維がどれだけ抜けるかの数字
分かったら、ここに足していく。
出どころ(8)
- ※1 国民生活センター「柔軟仕上げ剤のにおいに関する情報提供」2020-04-09(2014年度以降 928件・危害 594件 64%・年 130〜250件/香りの強いタイプを2倍量で TVOC 上昇/消費者への3つの助言/事業者への要望) 見る(2026-10-30 確認)
- ※2 環境省 報道発表「水質汚濁に係る環境基準の一部改正」2013-03-27(LAS を追加・河川湖沼 生物A 0.03・生物特A 0.02・海域 0.01/0.006 mg/L) 見る(2026-10-30 確認)
- ※3 小森行也・岡本誠一郎「下水処理場における直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)の除去特性」土木技術資料 57-10, 2015(環境省告示第30号・水生生物への毒性・洗濯や食器洗いの洗剤・活性汚泥法) 見る(2026-10-30 確認・PDF の1枚目)
- ※4 環境省 水・大気環境局水環境課「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)に係る排水対策について(案)」2018年(資料3-3) 見る(2026-10-30 確認・表紙のみ)
- ※5 WRAP「Valuing Our Clothes」2012-07-11(3か月長く着ると各 5〜10% 減・約30%は1年以上着ていない・年 35万t 埋立) 見る(2026-10-30 確認)
- ※6 環境省「サステナブルファッション」サステナブルファッションとは(着ていない服 約24枚・1着 CO2 約25.5kg・水 2,300L) 見る(2026-10-30 確認)
- ※7 Zambrano MC ほか「Microfibers generated from the laundering of cotton, rayon and polyester based fabrics and their aquatic biodegradation」Marine Pollution Bulletin 142, 2019(温度が高いほど・洗剤を使うほど繊維が抜ける) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
- ※8 TANE「ウールが縮まないのには、理由がある」(うろこと、水・熱・摩擦。出どころはそのページに) 見る