CLOTHING
衣服とかぶれ ── 素材か、加工か

綿100%なのに、かゆい。
化学繊維ではないのに、荒れる。
服でかぶれる、という話は、よく「素材」のせいにされる。
でも皮膚科の調べを読むと、原因としてくり返し出てくるのは、繊維そのものより、染料と、樹脂と、ゴム。
つまり、札に書いていないもの。
このページは、何が原因になりやすいか、どれくらいの人に起きているか、そして自分の服で何を見ればよいかを、出どころつきで並べたもの。
医療の判断はしない。くり返すなら皮膚科へ、とだけ書く。
まず、分けて考える
① 服に入っている → ② 汗や摩擦で肌へ移る → ③ 皮膚から入る → ④ 体に作用する(かゆみ・赤み)
「入っている」と「かぶれる」は、別の段。
かぶれ(接触皮膚炎)は、このうち④まで確かめられている数少ないもの。だからここでは、かぶれの話だけをする。
かぶれには二つある。刺激(こすれ・汗・蒸れで、誰にでも起きうる)と、アレルギー(その物質に反応する体質の人に起きる)。皮膚科はパッチテスト(背中に物質を貼って反応を見る検査)で、アレルギーのほうを調べる。
何が、原因になりやすいか
| 原因 | どこにあるか / 何が分かっているか |
|---|---|
| 分散染料 | ポリエステル・ナイロン・アセテートなど化学繊維の染料。綿・麻・ウールには使わない 1990〜2012年の54の研究を集めた総説で、「いまも衣服のかぶれのいちばん大事なアレルゲン」。検査した人の1%以上が反応した染料が3つ(Disperse Blue 106・124、Disperse Orange 3)※3 |
| 樹脂 | 形態安定・ノーアイロンのホルムアルデヒド系の樹脂。1920年代から使われ、「一部の人には強い感作源」※2 → しわになりにくい服は、何が入っている? |
| ゴム・接着剤 | 下着のゴム、手袋、靴。加硫促進剤と抗酸化剤(ゴムを作るときの薬)。MSD マニュアルは「衣類(手袋・靴・下着)に含まれる加硫促進剤および抗酸化剤、パーマネントプレス加工に使用されるホルムアルデヒド」を原因の表に挙げる※5 |
| 染料(その他) | パラフェニレンジアミン類(毛髪と繊維の染料)※5 |
| 繊維そのもの | 綿・麻・ウールは、チクチク・こすれの刺激が主。アレルギーの原因として挙がることは少ない(上の表に名前が出てこない) |
| 洗剤・香料 | 服ではなく、洗い方のほう。衣服のかぶれと混ざりやすい。準備中洗うの章で |
原因は、素材の名前より、
染料と樹脂とゴム。札に書いていないもの。
どれくらいの人に起きているか
数字は二つある。「服のかぶれが疑われて検査を受けた人」の中の割合と、「皮膚炎の患者ぜんぶ」の中の割合。混ぜないように、分けて置く。
疑われた人の中で ── メイヨー・クリニック(アメリカ)
2000年から2011年、服の染料や樹脂のかぶれが疑われて、繊維のアレルゲン42種で検査した 671人。
219人(32.6%)が、1つ以上の染料か樹脂にアレルギーの反応。71人(10.6%)は刺激の反応。※1
いちばん多かったのは、Disperse Blue 106(8.3%)、Disperse Blue 124(8.0%)、そしてメラミンホルムアルデヒド樹脂(8.0%)。
染料と樹脂が、同じくらい。※1
結論:「標準の検査だけでは見つからない。繊維のシリーズを足して初めて分かる」。※1
皮膚炎の患者ぜんぶの中で ── スウェーデン
皮膚炎で検査を受けた 1,481人に、繊維の染料を混ぜた試薬(テキスタイル・ダイ・ミックス)を貼ったら、3.6%が反応。
いちばん多い染料は Disperse Orange 3。※4
3.6%は「皮膚炎で病院に来た人」の中の数。ふつうに服を着ている人全体の数ではない。
日本にも、日本皮膚科学会の「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」がある。※6本文はこのページでは引いていない。
自分の服で、何を見るか
| 見るところ | 何が分かるか |
|---|---|
| どこがかゆいか | わき、腰、襟、太ももの内側、ゴムの当たる所、プリントの裏。汗をかいて、こすれる所に出やすい。場所が「服の形」と重なるなら、服を疑う |
| その服は何色か | 化学繊維の濃い色(紺・黒・濃い茶)は分散染料。綿100%の白なら、染料ではなく樹脂か洗剤を疑う |
| 札の加工の言葉 | 「形態安定」「ノーアイロン」「防しわ」は樹脂。→ 服の加工のこと |
| 一度洗ったか | ホルムアルデヒドは洗うと減る。→ 新しい服は、なぜ一度洗うとよい? |
| 洗剤と柔軟剤 | 服を替えても治らないなら、洗い方を疑う。香料・柔軟剤を一度やめてみる |
| くり返すか | 皮膚科でパッチテスト。「本人の服で検査するのが確実」と文献は言う。標準の検査だけでは見つからないことが多い※1 |
TANEの読み
「綿100%なのにかゆい」は、綿のせいではないことが多い。
かゆいのは、札に書いていないもの。染料、樹脂、ゴム、そして洗剤。
だから、素材を替える前に、一つずつ外してみる。
一度洗う。柔軟剤をやめる。形態安定の服を一枚だけ外す。
一つずつなら、何が原因だったかが分かる。全部いっぺんに替えると、分からないまま終わる。
やってみる
かゆくなる服を一枚、選ぶ。
札の繊維と加工の言葉、色、かゆい場所、洗い方を、紙に書き出す。
それだけで、「素材のせい」ではない可能性が見えてくることがある。
くり返すなら、その紙を持って皮膚科へ。
素材を替える前に、
一つずつ外してみる。
次の問い
では、染料や樹脂の少ない服は、どう見分ける?
→ 衣服の認証、何を見ればいい?
染料・樹脂・柔軟剤のこと → 服の加工のこと
→ 衣服を知る(衣の章のはじめへ。素材 → 加工 → 肌 → 水と土 → 選ぶ・洗う)
まだ、確かめられていないこと(4)
- 日本で、服の染料・樹脂によるかぶれがどれくらいあるか。日本皮膚科学会のガイドラインの本文を引いていない
- かぶれが出やすい体の場所の記述。文献の本文を開けず、一般に言われる場所を書いた
- 綿・麻・ウールの繊維そのものへのアレルギーがどれくらい稀か。「原因の表に名前が出てこない」まで
- 分散染料が、いまの化学繊維の服にどれだけ使われているか。総説も「使用の実態のデータは乏しい」と書く※3
分かったら、ここに足していく。
出どころ(6)
- ※1 Wentworth AB, Richardson DM, Davis MD「Patch testing with textile allergens: the Mayo Clinic experience」Dermatitis 2012;23(6):269–74(671人・32.6%・DB106 8.3%・DB124 8.0%・メラミンホルムアルデヒド 8.0%) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
- ※2 Reich HC, Warshaw EM「Allergic contact dermatitis from formaldehyde textile resins」Dermatitis 2010;21(2):65–76(1920年代から・一部の人に強い感作源) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
- ※3 Malinauskiene L ほか「Contact allergy from disperse dyes in textiles: a review」Contact Dermatitis 2013;68(2):65–75(54研究・26染料・1%以上は DB106・DB124・DO3) 見る(2026-10-30 確認・抄録)
- ※4 Isaksson M ほか「Exclusion of Disperse Orange 3 is possible from the textile dye mix…」Contact Dermatitis 2023;88(1):54–59(1,481人・3.6%) 見る(2026-10-30 確認)
- ※5 MSD マニュアル プロフェッショナル版(日本語)「アレルギー性接触皮膚炎の原因」の表(衣類の加硫促進剤・抗酸化剤・パーマネントプレス加工のホルムアルデヒド・パラフェニレンジアミン類) 見る(2026-10-30 確認)
- ※6 日本皮膚科学会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌 130(4) 2020, 523–567(書誌。国立国会図書館サーチ) 見る(2026-10-30 確認・書誌のみ)